Scalaパズル翻訳の苦労話

昨年のシルバーウィークあたりから今年の年始にかけてScala Puzzlersの翻訳作業をしていました。オンラインのドキュメントであればApache Clickなどそれなりのボリュームの翻訳をしたことがあるのですが、書籍の翻訳は初めてということもあり、苦労の連続でした。

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自分の場合、意味がわからなくてもパーツ単位でもいいのでまずは心を無にしてロボのようにひたすら直訳し、あとから日本語として読みやすい文章に整えていくという流れで進めていったのですが、ロボ的に直訳する作業も量的なつらさがあるのですが、純粋に技術的なドキュメントと比べ、Scala Puzzlersは原文が割と砕けた表現をしていたり、読者に語りかける部分があったりして、どう日本語に変換すべきか悩ましい部分が多かったです。

何度も読み返しつつ日本語を修正していくのですが、日本語として読みやすくするためにどこまで原文を崩していくかという判断が難しく、校正作業に入っても全編通して翻訳の見直しを続けていました。二周目くらいまでは原文と見比べつつ修正作業を行っていたのですが、三周目は完全に日本語訳だけを見て校正を行ったことでだいぶ読みやすい形にできたのではないかと思います。*1

最後まで悩んだのが各パズルのタイトルです。映画のタイトル等に引っかけていたりするものが多く、洋画におけるダジャレの日本語訳的なセンスが必要だと思われました。もちろん映画に詳しいわけでもウィットに富んだ翻訳センスがあるわけでもないので、意味の分からないタイトルがあったら近い単語でググってみて映画のタイトルにヒットしたら内容を調べて…というようなことをやっていました。正直うまく訳せているか自信がないものもあります。そういった事情もあり、一部タイトルに関する訳注を入れているパズルもあったりしますw

また、そもそも洋書でありがちなのですが、図を使わずにダラダラ説明が書いてあって非常にわかりにくい部分がありました。日本語の書籍(雑誌の場合もそうですが)だと、レイアウトの都合や読み易さといった理由からこれくらいの割合で図を入れて欲しいというリクエストがあったり、説明に図を使ったほうがわかりやすいケースでは積極的に使うことが多いのですが、今回はさすがに翻訳ということもあり、文章を削って図に差し替えるなどという傍若無人な行いは躊躇われたので、説明文をなるべくわかりやすいものに変えるといった努力をしました。*2

Scalaパズルはページ数もそこそこで版型も小さいのですが、いつも500ページとか600ページというような武器になるような本ばかり出しているのでこれくらいのサイズ、ページ数のカジュアルな本をサクッと書いてみたいなーと前々から思っていたのですが、実際やってみるとScala Puzzlersの翻訳という題材を選択してしまったことでむしろ「あれだけ苦労したのにこんなに小さい本になってしまうのか…」という思いに駆られましたw

なお、Scalaパズルのレビューには@OE_uiaさんと@eed3si9n_jaさんに参加していただきました。お二方ともScalaMatsuriの準備などでお忙しい中限られた時間を割いていただき、また貴重なコメントをいただきました。このような時期にご対応いただき本当にありがとうございました。

このような苦労を経てできあがったScalaパズル、現在開催中のScalaMatsuriで先行販売していただいています。2日目となる明日も4F翔泳社さんのブースで販売が行われるとのことですので何卒よろしくお願いします!

scalamatsuri.org

Amazonでも予約可能です。Kindle版もありますが、フローレイアウトではない可能性もありますのでご注意ください。リファレンスではなく読み物的なものなのでフローレイアウトでなくてもさほど問題ないのではとは思っていますが、実装どのようなものか見ていないので、電子版はなんともオススメしづらい感じです…。

Scalaパズル 36の罠から学ぶベストプラクティス

Scalaパズル 36の罠から学ぶベストプラクティス

  • 作者: アンドリュー・フィリップス,ネルミン・セリフォヴィック,竹添直樹,島本多可子
  • 出版社/メーカー: 翔泳社
  • 発売日: 2016/02/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*1:三校の段階で全編に渡り大幅な修正を入れてしまい、編集さまには申し訳ない気持ちでいっぱいです…。

*2:たとえば説明の中で登場するitという単語を、それが指し示す変数名に置き換えることで何を指しているのかわかりやすくするなど。