My Life in Red and White

昨年ベンゲルの自伝が出版されたのでこれは読まなくてはとKindle版を購入していたのですが、年末年始の休暇中にようやく読むことができました。

内容については幼少期〜選手時代からカンヌ、ナンシー、モナコでの監督時代、名古屋、アーセナル初期〜Invincibles時代、エミレーツスタジアム建設期〜辞任、そして現在のFIFAでの仕事とベンゲルの歩みが自身の言葉で綴られています。

読んでまず思ったのは、晩年のイメージと違ってかなりスパルタンな経歴と思想の持ち主なんだなということです。とにかくハードワークと精神論という感じですw 若手を中心に一度信じたプレーヤーを辛抱強く使うのは積み重ねられた成功体験によるものであることがわかる一方、アーセナルでの監督時代はそれが足枷になっていた面があることも否めないのですが、まあそういう部分も含めてベンゲルらしいなという感じがします。

当時は知りませんでしたが、名古屋での18ヶ月はフランスリーグでのスキャンダルから逃れてサッカーに集中できる充電期間にもなっていたようですし、異文化への適応という面でその後アーセナルでの仕事にも役立ったようです。選手が練習熱心すぎて練習しすぎないようボールを隠さなければならなかったとか、料亭でのプレスカンファレンスで足が痺れて死にそうだったなどの面白エピソードが多いのも名古屋時代の特徴ですねw 短い期間ながらここで日本との繋がりができたことは自分を含め、現在日本に多数のアーセナルファンが存在するきっかけにもなっていると思うので、当時のフランスリーグでのスキャンダルについてはむしろ感謝すべきなのかもしれません。

全編通して物議をかもしそうな負の側面についてはあまり触れられていないのもベンゲルらしいところで、アーセナルの監督を辞任したのは自分の意志ではなかったという点くらいでしょうか。エミレーツ建設時代の心労や、プレミアリーグの発展とともに肥大化するクラブ組織の中での苦労は痛いほど伝わってきましたし、それだけに辞任も無念であったろうと思います。ただ、個人的にはベンゲル自身もエミレーツの建設のための負債の返却が終わって、ある意味緊張の糸が切れてしまったことがその後の成績にも影響したのかもしれないと感じました。

たらればになってしまいますが、もしバルサとのCL決勝でレーマンが一発退場していなければ、セスクやロビンがいた時期に一度でもプレミアリーグで優勝できていれば、ミラクルレスターのシーズンにカソルラが怪我をしなければ、もう少し違う未来もあったのではないかと考えてしまいますね。そうすれば何人かの主力選手は移籍することなくチームは競争力を保つことができ、ベンゲルはまだ監督で、エジルはこんな去り方をしなくても済んだかもしれない。今となってはどうにもならないことですが、現在のアーセナルの窮状を目の当たりにしているだけに、後半のアーセナル時代の章を読んでいると当時の記憶が思い起こされて辛い気持ちになってしまいました。

巻末にはベンゲル監督の記録や写真なども掲載されており、アーセナルファンであればもはや記念品として持っておくべき一冊と思います。自分はKindleで読んだのですが(スマートフォンの翻訳機能が便利w)、あまりにも名著すぎたのでハードカバーもオーダーしてしまいました。日本にはアーセナルファンが多いので日本語訳も出るといいなーと思いますが、割とストレートな英語で書かれていますし、分量もさほどでもないので英語での読書の題材としてもちょうどよかったです。

なんにせよ、ベンゲル自身はまだサッカーへの情熱を失っていないようですし、今後はFIFAというより影響力の強い立場からサッカーの発展に尽力してくれるはずです。また、ベンゲル退任後に暗黒時代に突入してしまったアーセナルもまだまだ予断を許さないもののアルテタの下で一時期の絶不調を脱しつつあります。ベンゲル先生の今後の活躍を願いつつアーセナルを応援し続ける所存です。ハードカバーが届いたらもう一回読み直してみようw