仕事でマイクロサービスっぽいことをやっており体験から学ぶ部分も多いのですが、翻訳版が出ていたので知識の整理という意味で読んでみました。
- 作者: Sam Newman,佐藤直生,木下哲也
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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マイクロサービスに必要な技術基盤
結論から言えばマイクロサービスアーキテクチャを採用する上で必要となる技術的な基盤について浅く広く抑えられています。ところどころで著者の体験談やNetflixでの事例などが紹介されており、成功・失敗パターンの例として参考になります。
また、マイクロサービス固有の話ではないものの、セキュアでスケーラビリティの高いシステムを構築するためにエンタープライス業界で培われてきた技術基盤やノウハウについての解説もあり、特にこういった領域に触れたことのない方にとっては学びが多いのではないかと思いますし、逆にすでにアーキテクトをやっている方は既存の技術やノウハウをどうマイクロサービスのコンテキストにあてはめていけばよいのかがわかるのではないかと思います。
最後は人(と組織)の問題
特にハッとさせられたのは「 10章 コンウェイの法則とシステム設計」でした。
本書で述べられているように、マイクロサービスの世界ではサービスの開発から運用までの全責任をチームが負うことになりますが、モノリシックな世界では開発者が運用上の懸念に無関心になってしまう傾向があり、こういった開発者をマイクロサービスの世界に投げ込むと仕事の全責任を負うことを不快に感じる可能性がある、というのはあり得ることだと思います。
マイクロサービスアーキテクチャを採用する際にはこういった部分を含めて考える必要があるという認識を、開発者だけでなくソフトウェア開発チームの組織設計や運用をする側が持つ必要があるのではないでしょうか。
まとめ
控えめに言って、マイクロサービスアーキテクチャの採用を考えているのであれば読んでおくべき一冊だと思います。
特定の言語や技術にフォーカスしていないので陳腐化もしにくく、例えマイクロサービスアーキテクチャの採用を考えていないとしても情報システムの近代的なアーキテクチャやソフトウェア開発組織の運用について学ぶべきことの多い書籍だと思います。